「進撃の巨人」原作者、諌山創さんから『一命』への感想コメントをいただきました

大ヒットコミック「進撃の巨人」原作者、諌山創さんから『一命』へのコメントをいただきましたので、全文を掲載いたします。


「見終わった後はいろいろと痛かったです。一つは竹光での切腹シーンが痛すぎて思わず声をあげたほどです。
斬れ味の鋭い得物でざくっといけばそれほど痛いとは思わなかったでしょうが、大根もまともに切れないような竹で地道に刺していくさまは、今まで見たあらゆる作品のなかでも一番物理的な痛みが伝わるシーンでした。またそれが長い!
絶対に逃げられそうにない状況が凄惨さをより一層際立たせているようでした。

また、一連の構成には一部の映画好きのあいだで語られる「蟹と修造」なる技法がほどこされていると感じました。
松岡修造がテレビ番組で蟹を貪り食うシーンがあったとします。修造視点から見れば「蟹おいしそう」といった感想しかいだけませんが、そのあとに、お父さんカニの帰りを待つ蟹親子のシーンを入れることによって同じ蟹を食うのシーンでも意味合いが変わってくるといったものです。

冒頭の瑛太さんの命乞いのシーンは「みっともない、往生際が悪い、もう切るしかないからさっさとしろよ」ぐらいに思ってしまいました。そして後に知るいきさつを知って、自分も必死の命乞いに全く耳をかさなかった武士側の一人だったんだといった罪悪感を着せられたのです。

もう一つの痛かった点は、切腹もしくは特攻などの死を美化するような「女にはわからない男の世界」みたいな作品に自分自身が感銘を受けたりその言葉に酔っていた部分があったことです。なので自分は海老蔵さんに竹光でぶっ壊される側です。この作品で打倒される側だったということに気づかされる痛みです。

ただ人間として生き物として春を待っていたという女性的な現実感、それに比べ言葉や飾りでしかない上辺だけの誇りに酔狂して命を軽視する行為は子供遊びの延長のように感じ、ラストショットのそれでも頭を下げるってシーンはとても滑稽に見えました。ひどいぐらい皮肉だったと思います。人類史はそんな男性的ヒロイズムが支配してて、それに乗れない人は振り回されるしかないといった構造みたいなものがある、って気がします。

海老蔵さんかっこよかったです。芸に生きる人間は芸さえしっかりこなせばプライベートなんかどうでもいいと思いますね。セットの容赦ないボロさもすばらしかったと思います。病気になるには説得力十分なぐらい劣悪な環境でした。」


諌山創さん(「進撃の巨人」原作者)


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◆『一命』公式サイト
http://www.ichimei.jp/
*PC版、モバイル版、スマートフォン、いずれも同じアドレスにてご覧いただけます。
  
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